(“特殊魔法”…?)
私は、床に倒れたまま動かないダーナへ視線を落とす。
「…死ん…じゃったの…?」
「いや、魔法陣を砕いたぐらいじゃあ人は死なないよ。…二度と魔法を使うことは出来ないけどね。」
ランバートが、まつ毛を伏せて、ぽつりと答えた。
しぃん…、と辺りが静まり返り、原型をとどめていない町長の家がまるで現実ではないかのように思える。
だが、先ほどまで起こっていたことは夢なんかではない。
ダーナが語ったことも、すべて…。
…がくん!
「…っと!」
急に膝の力が抜けた。
倒れかける私を、さっ、とランバートが抱きとめる。
「…ノアちゃん…?」
名前を呼ばれた瞬間。
自然と、頬に涙が伝った。
ぽろぽろ溢れて、止まらない。
戦いが終わり、安心したからなのだろうか。緊張の糸が切れて感情が溢れる。
ダーナの語った過去の出来事が、ぐるぐると頭の中に渦巻いた。
私が“悪魔の子”と呼ばれた訳も、孤児となった訳も、すべて明らかになった。
それはすべて、想像をはるかに超えていてまるで一冊の本を読んだかのようだ。
過去の自分の身に起こったこととは到底思えない。
…ぎゅぅ…っ!
その時、私の体を抱きしめるランバートの腕に力が込もった。
視界が彼の服でいっぱいになり、他には何も見えなくなる。
「…ごめんね、ノアちゃん。」



