大剣のエーテル



…と、全てに決着がついたと思った、その矢先だった。


「!」


ランバートが、私の隣でふっ、と真剣な表情になる。

イヴァンさんも、何かを察したように銃を構えた。


「…逃が…すか…!」


低く、掠れた声が聞こえた。

声の主は、気絶させられていたはずのダーナだった。

彼は、まっすぐ私に向かって魔法陣を広げている。


(!)


この距離ではランバートの剣は届かず、イヴァンさんが銃の照準を合わせる時間もない。

一気に全身の体温が下がった、その時。

ランバートが、素早くダーナに向かって腕を突き出した。

そこに現れたのは、翡翠色の魔法陣。


(…!あれは、魔法…?!)


ブワッ!!


ランバートの魔法陣から放たれた文字の羅列が風となってダーナを包む。

すると次の瞬間、ダーナの広げていた漆黒の魔法陣が、バキン!と大きな音を立てて砕け散った。


(!!)


「ぎゃぁああっ!!」


断末魔とともに、ダーナが仰向けに倒れこんだ。

もう、ピクリとも動かない。


「…はぁ……」


ランバートが、小さく息を吐いた。

その瞳の色は、魔力の影響で揺れている。

目の前で起こった出来事に頭がついていかない。

私は、動揺しながら隣を見上げた。


「ランバート…。あなたは、魔法で攻撃出来ないんじゃあ…?」


躊躇しつつそう尋ねると、彼はどこか悲しげな声で呟いた。


「攻撃魔法は使えないけど、魔法で戦えないとは言ってないよ。…俺が持って生まれたのは、“相手の魔法陣を破壊する”特殊魔法だから。」