ドッ!!
鈍い音が辺りに響いた。
バキバキバキッ!!
肩口に一撃を喰らった大男が、そのまま部屋の床を突き抜けて沈む。
それは本当に一瞬の出来事で、まばたきをしている間に決着がついた。
(…う、嘘でしょ……)
気を失った大男に、ランバートは小さく呼吸をして剣を肩に担ぐ。
(こんなに呆気ないなんて…。さっきまでの戦いはなんだったの…?)
イヴァンさんといえば、タバコを指に挟み、庭で優雅に白い煙を吐いている。
「…ノアちゃん、怪我は無い?」
そう言って何事もなかったかのようにこちらへ歩み寄るランバートは、息一つ上がっていない。
にこにこと穏やかな顔をして私を見つめる彼に、私は複雑な心境で視線を返す。
「本当に…、ランバートがエーテルの団長なの…?」
すると、私の問いにぱちり、とまばたきをした彼は、さらりと答えた。
「隠してたつもりはないんだけどね。言ったでしょ?“脱いだらすごい”って。」
「…っ、た、確かに言ってたけど…!」
(…“能ある鷹は爪を隠す”の典型だわ。未だに信じられない。この人がエーテルの団長だなんて。)
「おい、さっさと帰るぞ。こっちは町中お前達を探し回って疲れてるんだ。」
イヴァンさんが、気だるそうにそう言った。
なんだかんだ心配してくれていたらしい。
ランバートもそんなイヴァンさんに苦笑しながら大剣を下ろした。



