その瞬間。
記憶の中のランバートの言葉が蘇る。
“俺は、攻撃魔法が使えないんだ”
(…ま、まさか……!)
どくん…!と胸が音を立てたその時。
大剣を手にしたランバートが小さく口を開いた。
「…俺は、エーテルの団長の名を語られたとしても、町民達に“よいしょ”されたり宿屋を貸し切りにするくらい、小さなことだし…見逃そうと思ってた。」
その時、ランバートは「でも、」と言葉を途切れさせた。
(…!)
すっ、と顔を上げた彼の翡翠の瞳に、目を奪われる。
圧倒的な存在感と威圧感。
本当に私と草原で並んでいたランバートと同一人物なのかと思うほど、気迫が違う。
ランバートは、大男を見上げながら低く続けた。
「エーテルの立場を利用して罪を犯すのは見過ごせない。…禁忌を犯すことが許されるのは、人の人生や命を奪ったことに対する重さを背負う覚悟がある奴だけだ。」
ゆらり、と大剣を構えたランバートは、誰が見ても“エーテルの団長”だと認めざるを得ないほどの殺気を纏っている。
彼は鋭い眼光で大男を睨みつけ、奥底に秘めていた熱が溢れたように言い放った。
「お前に、エーテルを名乗る資格は無い。
…今ここで、お前の自尊心ごと叩き潰す…!」
ぞくり!
体が震えた。
ランバートから目が逸らさない。
「…く、そぉ…!このガキが…!」
大男が後に引けなくなったように大剣を振り上げた。
重い一撃を、ランバートは涼しい顔で避ける。
「……ぐっ………?!」
大男が目を見開いたその時。
ランバートが、タン、と床を蹴った。



