一瞬、大男の表情に焦りの色が見えた。
しかし、大男は険しい顔をしてイヴァンさんに言い返す。
「デタラメを言うな…!俺は紛れもなくエーテルの団長だ!この大剣こそ、攻撃魔法と武力を兼ね備えた“強さの象徴”さ!」
大男は、ぐわん!と大剣を振り上げ、豪快に肩に担いで見せた。
私はその力強さに息を呑んだが、イヴァンさんは顔色一つ変えずにため息をつく。
そんな彼の態度にますます苛立った様子の大男は、ぎりぎりと歯を食いしばった。
するとその時。
イヴァンさんは、怪しい風呂敷包みをゆっくりと肩から下ろした。
そして、部屋の中にいるランバートに向かって、ぶん!と投げ渡す。
ランバートの手に荷物が渡った瞬間、ちらり、と風呂敷に包まれていたものが顔を出した。
研ぎ澄まされた、“鋼の大剣”が目に飛び込む。
(…え……?)
私と大男が唖然とし、思考が停止した瞬間
イヴァンさんが気だるげに口を開いた。
「…一つ、教えてやるよ。エーテルの団長が大剣を持つのは、“強さの象徴を見せつけるため”でも、“魔力と剣で戦うことで戦力を高めるため”でもない。…武器でしか、戦えないからだ。」
はらり、と床に落ちる風呂敷。
露わになった怪しい荷物の正体は、ランバートの体とは不釣り合いな“大剣”だった。
イヴァンさんの、すべてを明らかにする結びの言葉に、私は言葉を失った。
「“ウチの団長”は、攻撃魔法が使えないんでな。」



