部屋の空気が、一変した。
重々しい雰囲気が辺りに流れる。
「ノアちゃんは魔法を使ったことがないと言った。自分でも魔力を持たずに生まれてきたことを信じ込んでいたくらいだからね。…つまり、彼女の魔法陣から魔力が消失したのは、“記憶にも残らない相当幼い頃”だということになる。」
ランバートは、「例えば…」と続けた。
「“生まれてすぐの赤ちゃんの時”とかね」
「!!」
今まで小さな動揺しか見せていなかったダーナさんの表情が、初めて崩れた。
いつもの仮面とは違う、心の底から焦ったような顔つきだ。
「あんた、何を隠してる?紅茶に毒を混ぜてまで知られたくないようなことなのか?」
(え…っ?!)
ランバートが、ぽうっ、と翡翠の瞳を輝かせた。
次の瞬間、私たちの前に出されていたティーカップの中の紅茶の色が紫へと変わる。
(“毒”…?!嘘でしょう…?)
私が現実を受け止めきれずダーナさんを見上げた、その時だった。
「…くっ……」
低い笑い声が耳に届いた。
その声の主は、紛れもなく目の前のダーナさんだった。
不気味なほど軽やかな笑い声は、まるで人形が唱える呪文のようだ。
「…計算が狂ったな。まさか、このような形で気づかれるとはね。」



