「どう…して……」
絶望の中で口にできたのは、弱々しいたった4文字だった。
どうやら、私の言葉は一つも彼の心に響かなかったらしい。
縋るような視線を彼に送ると、ダーナさんは仮面のようないつもの表情で言った。
「君の存在が外部にばれると混乱どころの騒ぎじゃなくなると、説明しただろう。国の歴史を揺るがすほどの問題なんだぞ?それでも行くというのなら、私にも考えがあるが。」
ぎらり、と彼の瞳が闇を宿した。
有無を言わせない圧力がかけられる。
(…“考え”って…本当に私を監禁でもするつもり…?)
目の前に差し込んだ希望の光が、あっけなく絶望と化した。
やはり無謀だったのだ。
私には、新しい本と出会うことすら許されない。
(…もう、いくら話したって平行線だ。)
目の前が真っ暗になる。
そうだ。
初めから分かっていたことじゃないか。
この状況が変わることなんて一生無いと。
もう、全てを諦めかけ顔を伏せた
その時だった。
「…一つ、いいか?」
黙り込んでいた青年の声が部屋に響いた。
私とダーナさんは、はっ!として彼を見る。
翡翠の瞳は、まっすぐにダーナさんをとらえていた。
「ダーナさん…、って言ったっけ。
ずいぶん酷いこと言うね、あんた。」



