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「靴は、そこに揃えて脱いでくれ。奥の部屋にソファがある。紅茶でも用意するから、先に行っていてくれないか。」
ダーナさんに言われた通り、私は玄関で靴を脱ぎ、揃えて置いた。
そして綺麗に掃除された廊下を、ゆっくりと進む。
ふと後ろを振り返ると、ランバートはじっ、と玄関を眺めて立ち止まっている。
「何してるの?早く行こうよ。」
「んー…、そうだね。」
まさか今さら怖じ気づいたのかと思ったが、ランバートは何を考えているのか悟らせないポーカーフェイスでこちらに向かって歩き出した。
(…この先ランバートが逃げようとしたら全力で捕まえよう。)
そんなことを思いつつ突き当たりの部屋に入ると、そこにはダーナさんが言った通り長めのソファがあった。
意外とふかふかで、座り心地が良さそうだ。
2人並んで腰を下ろした瞬間、ティーカップが乗ったおぼんを持つダーナさんが部屋に入って来た。
…バタン!
閉まる扉の音にびくりとしたが、ダーナさんは顔色1つ変えずに、仮面のような微笑みで私たちの前の椅子に座った。
「…さて。私に話があるんだろう?」
ダーナさんが、そう切り出した。
怯む気持ちを必死で堪え、私は口を開く。
「…この町を、出て行こうと思います。」



