予想通りの発言に、イラっとした。
隣りに座る彼女に聞こえないよう、うまく店の喧騒に紛れながらロルフに尋ねる。
「一体、何がどうなってるわけ?」
すると、通信機の向こうからからり、とした笑い声が聞こえた。
『実は、一派の奴らが“電圧所”で暴れててな。全員仕留めたはいいんだが、俺の炎に巻き込まれたコードが焼ききれてな。システムがストップしちまったみてぇなんだ。』
「やっぱりトドメはアンタのせいか!町中が停電してるんだけど?!」
『だよなー、どうしよ?』
「知らないよ、ばか!あれほど街は壊すなって言ったのに!」
能天気な戦闘狂に怒号を飛ばすが、状況は変わらない。
店内は相変わらずざわめいていて、燕尾服を着た店員たちがお客たちを静めている。
(まずいな。停電になったとしても、非常用の電源に切り替わるから問題はないんだろうけど…それまでの時間をなんとか繋がないと…!)
俺は、はっ、としてピアノへと視線を落とす。
月明かりに照らされ、かろうじて鍵盤が見える。
(…やるしか、ないか。)
俺は、小さく呼吸をして隣りに座る彼女へと囁いた。
「ごめん、ちょっとだけ俺に独り占めさせて?」
「え…っ?」
彼女が目を見開くと同時に、俺は白い鍵盤の上へと指を置いた。
…ジャーン!
大きくペダルを踏み、店内にピアノの音が響く。
客たちがぴたり、と騒ぎをやめ、一斉にこちらへと視線を移した。



