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タッタッタッ…!
カレンダーの日付はぴったり12月25日。
時計の針はまもなく午前11時を回ろうとしていた。
(ばかばか!浮かれてたら待ち合わせギリギリになるなんて…!ランバート、もう来てるよね…?)
人通りの多い街を全速力で駆ける。
待ち合わせ場所が見えたと思ったその時。
噴水の前に、文庫本サイズの本を読んでいる様子のランバートが見えた。
(…!)
無意識に足が止まる。
ロング丈のチェスターコートを羽織り、いつものエーテルの服とは違う私服のランバート。
(…は、初めて見た…かっこいいなぁ…)
すると、ふいにランバートが本から顔を上げた。
ぱちっ、と目が合う。
その途端、彼はにっこりと微笑む。
(っ、見惚れてる場合じゃない…!遅刻だっ!)
ぱたぱたと駆け寄り、彼に声をかける。
「ご、ごめんなさいっ!寒い中待たせて…」
「ううん、平気だよ。俺もさっき来たとこ。」
そういう割には、小説の栞は物語の半分を超えたあたりに挟まっている。
しかし、ランバートはさほど気にしていない様子で本をカバンにしまい、少し照れたように私に言った。
「ふふ。なんかさ、今の会話デートっぽいね。」
「!」
ランバートは「まぁ、実際デートなんだけどさ」と笑うが、私は不意打ちのセリフに胸が高鳴る。
(そうだ。これはデートなんだ…!初めてのデート…!)
急に緊張してきた私に、ランバートはぱちりとまばたきをした。
彼は、ふっ、と笑ってふわりと私に手を伸ばす。
「走って来なくてもよかったのに。髪…、可愛いね。」
せっかく編み込んで巻いた髪の毛が、風に吹かれたせいで乱れている。
ランバートは優しく私の髪をといて耳にかけた。
わずかに触れる指先に、どきん、とする。
「ん。じゃあ、行こっか。」
「!…うんっ!」
さりげなく繋ぐ手。
自然に彼のポケットに引き込まれる左手が熱い。
車道側を歩くランバートは、いつもより大人っぽく見える。
(…今日は1日、2人っきりだ…。)



