ルタの気まずそうな顔に慌てていると、彼は小さく息を吐いて白衣のポケットに手を入れた。

そして、すっ、と差し出されたのは1枚の券。


(…?)


渡されるがまま受け取ると、ルタは表情を変えずにさらり、と言った。


「これ、城下町にあるレストランのクリスマスディナー券。ノアにあげるから、ランバートと行って来なよ。」


「えぇっ?!!」


私は、ばっ!と手の中にある券へと視線落とす。

そこに書かれている文字に目を通した瞬間、思わず声をあげた。


「こっ、これ“シャトー・クレ”の券?!予約を取るのも難しいって噂の、超有名レストランだよ?!本当にもらっていいの?!」


「ふーん。ノアも知ってるくらい有名なレストランなんだ?知り合いにもらったんだけどさ、俺クリスマスは予定あるし。別にいらないから。」


(“ふーん”って…!意外とルタって、流行に疎いんだな。これ、本当にすごい券なのに。)


ただのディナー券でも手に入らないのに、“クリスマスディナー券”は、とんでもなくレアなはずだ。

彼は、特に興味もなさそうに、紙切れ同然と言わんばかりである。

まるで、“その辺で拾った”顔だ。

そんなルタに、私はおずおずと尋ねた。


「えっと…、その“知り合い”って、女の人?」


「え?」


「もしかして、ルタと一緒に行きたかったんじゃないかな…?」