大剣のエーテル


過去の記憶と同じ仕草。

過去の記憶と違うセリフ。

うなじに伸びるランバートの片手。

包み込むような甘い声で囁かれた。


「…ノアちゃん…」


「!」


翡翠の瞳が熱を宿して、長いまつ毛がゆっくりと伏せられる。

私が目を見開いた瞬間

甲板に映る2人の影が重なった。


「…っ……」


時間が止まる。

体が熱い。

ちゅっ、と水音をたてて離れた彼の唇が、ふわりと優しく弧を描いた。


「好きだよ。…大好き。」


(…!)


かあっ!と顔が赤く染まった。

直球すぎる言葉に、私の心はガッタガタだ。

防御も何もありゃしない。


(…また、私には言わせてくれないんだから…)


「…ずるい、よ…」


ぽつりと口から出た言葉に、ランバートは甘く微笑んで私を見つめた。


「うん、ずるいね。…ごめんね。」


あやすような口調に胸が鳴った。

やっと想いが通じあったとはいえ、実感を覚える余裕もない。

彼は、優しく私を撫でて愛おしそうに言葉を続けた。


「…君をさらってきて正解だった。もう、突き放したりなんてしない。」


“ずっと、俺の隣に”


翡翠の瞳が、あられもない熱を宿している。

真っ白な軍服が夜の海と空に映えて、私の視界にくっきりと映し出された。