ランバートの表情が崩れた。
図星を突かれたように目を見開く彼。
とっさに照れたように無言になった。
(まさか…。ほんとに…?)
ドキドキして彼を見つめる。
ランバートは、翡翠の瞳を泳がせてため息をついた。
「あー…、かっこ悪いなあ……」
ぼそり、と呟いた声は、微かに掠れている。
その時。
頬を染めた年上の彼が、初めて本音が溢れたように声をあげた。
「そーだよ…っ!ノアちゃんに指輪を贈るのは、俺の役目!」
(!!)
彼の熱が伝染したように、私の頰も赤くなる。
はっきりと言い切ったランバートは、ヒュッ!と指輪を空に投げた。
パァッ!
翡翠の瞳が輝くと同時に、指輪に浮かぶ魔法陣が砕かれる。
パァン!
さらさらと砂のように砕けて消えていく指輪。
夜の闇に、魔法石のかけらがまるで星のようにキラキラと光る。
「…子どもっぽい嫉妬だって、幻滅した?」
ランバートの声が小さく聞こえた。
ちらり、と翡翠の瞳がこちらを伺う。
その仕草は、先ほどまでの色気のある大人とは別人で、まるで震える子犬のようだ。
私は、くすりと微笑んで口を開く。
「幻滅なんてしないよ。…嬉しいよ。」
「…!」
甲板には、2人っきり。
潮風が優しく頬を撫で、波の音だけが聞こえる。
急に2人の間の空気が濃くなった気がした。
今なら、伝えてもいいだろうか。
あの日言えなかった言葉の続きを。



