「ランバート…?どこにいるの?」
きょろきょろと辺りを見回すが、人影はどこにもいない。
扉が1つしかない以上、ランバートがここからいなくなることはないはずだ。
コツコツ…
甲板の柵に向かって歩き出す。
月が、ゆらゆらと私の影を映した。
(いない…、嘘でしょう?)
ランバートの姿が頭をよぎる。
「まさか海に飛び込んだの…?」
と、私が呟いた
その時だった。
「ふふっ…!」
(!)
小さな笑い声が耳に届く。
はっ!とした瞬間、後ろから待ちわびていた声が聞こえた。
「俺はここだよ、ノアちゃん。」
優しげな声とともに、ふわり、と白いマントが私にかけられた。
振り向くと、そこにいたのは翡翠の瞳を細めた彼。
「ランバート…!!」
つい、顔が緩んで彼の名を呼んだ瞬間。
ランバートが私を抱き寄せた。
…ぎゅ…っ
確かな腕の感触。
温かな体温を服越しに感じる。
「…会いたかった。」
「!」
耳元で彼が甘く囁いた。
その一言だけで、私の心臓は破裂寸前になる。
鼓動が一気に速くなり、どくどくと音が聞こえた。
ランバートは、「ふふ…」と小さく笑って言葉を続ける。
「俺が海に飛び込むわけないでしょ…?」
「ら、ランバートはやりかねないじゃない。」
「…ノアちゃんは俺のことなんだと思ってるの?」
くすくすと笑う彼に、私は小さく尋ねた。
「…体はもう大丈夫なの…?1ヶ月間ずっと働きっぱなしだったんでしょう?」
「うん、もう平気だよ。ここ1週間はゆっくり過ごせてたし…」
(え?“ここ1週間”…?)
私は、すっ、と彼を見上げた。
「ずっと忙しかったんじゃなかったの?」
「仕事はそこそこあったけど、夕方には終わらせてたよ。城にカンヅメ状態だったけどね。」
その言葉に、私はわずかに眉を寄せる。
「なんで会いに来てくれなかったの…?」
「!」
「…ずっと、ランバートのことを待ってたのに…。」



