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「わぁ…!大きな船…!」
ルタの運転で車に乗ること1時間。
風にのって海の匂いがしてきた頃、窓の外に見えたのは本の中でしか見たことがないレベルの大きな豪華客船だった。
港に悠々と停泊する客船を見つめていると、イヴァンさんが頬杖をついて呟いた。
「へぇ、クルージングで祝賀パーティーとは王もやるじゃねぇか。」
(“クルージング”…?!まさか、あの船がパーティー会場なの?!)
目を輝かせる私に、後頭部で手を組んだロルフがニヤリと笑って口を開く。
「想像以上だな。メシにも酒にも金かかってそうだし、美人のオネーサンもたくさんいそうだ。」
「はいはい。不祥事だけは起こさないでね、エロガキ。」
表情を変えずに低く言ったルタに私は苦笑する。
やがて港へと到着した私たちは、潮風に吹かれながら車を降りた。
スーツやドレスの人々が招待状を見せながら客船へと乗り込んでいるのが見える。
「ねぇ、招待状はあるの?」
私がそう尋ねると、ロルフがにやり、と笑って答えた。
「そんなんいらねぇよ!エーテルは“顔パス”だからな。俺たちといれば、ノアもすんなり入れるぜ?」



