(車…?)
ふと、宿舎の前を見ると、一台のスタイリッシュなデザインの車が停められていた。
コツコツ、と歩み寄り、運転席に乗りこむルタ。
シートを調節し、慣れた手つきでエンジンをかけるルタを見つめていると、イヴァンさんが私に声をかける。
「ノアは後部座席に乗ってくれ。後からランバートが来るから隣を空けてな。」
「!わ、分かった!」
ドキドキとしてルタの後ろに乗り込むと、くぁ…、と気だるげにあくびをしたロルフが口を開いた。
「軍の公用車は4人乗りだろ?ランバートが後ろってことは、俺は助手席に乗りゃあいいのか?」
すると、イヴァンさんは琥珀の眼光を鋭くしてロルフに答えた。
「何言ってんだ。そこは俺のポジションに決まってんだろ。」
「はっ?!」
薔薇色の瞳を見開くロルフに、イヴァンさんは容赦なく続ける。
「場所はわかるだろ?お前はバイクで行け。」
「扱い雑かよ!」
「免許持ってるだろ?」
「あるけどよ…」
と、その時。
エーテル専用の通信機がピリリリ、と音を立てた。
通信に応じたルタは「…うん、了解。」と答え、数十秒後、車の窓を開けて外で争っていた2人に声をかける。
「ランバート、手が離せそうにないから直接会場に向かうってさ。そこの戦闘狂は後ろに乗せよう。」
「「!」」
(!…ランバート、ここに来ないんだ…)



