心から嬉しそうな声が聞こえた。

俺の胸に顔を埋める彼女に、愛おしさが溢れる。

何とも言えない気持ちがこみ上げる。

ぎゅう、と彼女を包み込むと、俺の口から無意識に言葉がこぼれた。


「…そっか…、よかった……!」


地面に座り込んだまま、小さな体を抱きしめる。

さっきまで幻夢石に乗っ取られそうだったのが嘘みたいだ。


(ノアちゃんの声を聞いた瞬間、全部吹っ飛んだ。)


「…もしもーし。あー…、いちゃつくのはそこら辺で切り上げてくれねぇかな。」


「「!」」


はっ!として顔を上げると、居心地悪そうに顔をしかめたイヴァンがこちらを見下ろしていた。

それに気づいたノアちゃんが、ドン!と俺を突き飛ばす。


「や、やだ!ごめんっ!」


「ほがっ!!」


ドサ、と地面に倒れこむ俺を見て、イヴァンは小さく息を吐いた。

安心して肩の力が抜けた様子の彼は、チャキ…、と拳銃を構えて低く言う。


「見ろ、ランバート。幻夢石はまだやられてねぇみたいだぜ。」


「!」


イヴァンの言葉に上空を見上げると、そこには傷のついた幻夢石が、ゆらりと浮かんでいた。


(…魔法陣を砕かないとダメ、ってことか。)