「イヴァンさん、絶対外さないでね…!」
「誰に言ってんだ。俺が的を外したことがあるか?」
ここにいるはずのない彼女の声がした。
それに答えたのは、俺の右腕であるイヴァンらしき声。
パァン!
鳴り響く1発の銃声。
それと同時に、俺を霧に包んでいた幻夢石がキュン!と撃ち抜かれた。
ブワッ!!
一瞬で晴れる黒い靄。
と、その瞬間。
俺の視界に映ったのは、闇の中で恋い焦がれていた“彼女”だった。
パァァァッ!!
柔らかな光が俺の体を包む。
体を蝕んでいた痛みが、みるみるうちに消えていく。
(これは…、治癒魔法…?)
意識が呼び戻され、だんだんと目の前がはっきりとしてきた。
ポゥ…、と淡い光が消えた瞬間。
俺の体を、彼女の華奢な腕が抱きしめた。
ぎゅうっ…!
(……!)
伝わってくる彼女の体温。
今聞こえているのは彼女の鼓動か、俺の鼓動か。
それも分からないほど、2人の間には距離などなかった。
「…よか…った………」
ぼそり、と耳元で聞こえた彼女の声は震えている。
胸の傷の痛みが消えた頃、オレンジ色の綺麗な瞳と視線が交わった。
俺は、無意識に尋ねる。
「ノアちゃん……?…どうして…」
「ババ様の治癒魔法をコピーさせてもらったの。ランバートを助けに来たんだよ。」
(…!)
その瞳には、彼女の色に染まった魔力が宿っている。
「ランバート、聞いて…!」
彼女は、ふわり、と微笑み、俺に再び抱きついた。
「私ね…、魔法使いに戻れたよ…っ!」



