(確かに、ババ様は自力で歩くことが出来ない。そんな体で、もし、幻夢石の攻撃に当たったら…)


その時、私の脳裏にある考えが浮かんだ。

はっ!と自分の手のひらを見つめる。


「私なら…、ババ様の魔法をコピー出来るかもしれない…!」


「「「!」」」


私の言葉に、ババ様とイヴァンさん、ルタが目を見開いた。

私は、彼らに向かって言葉を続ける。


「私がババ様の治癒魔法をコピーして離島に向かうわ!それなら、きっと、ランバートを助けられる…!」


と、その時だった。

パトカーの後部座席がガチャ、と開き、すっ、と1人の少年が現れた。

瑠璃色の瞳が、真っ直ぐに私を見つめている。


「フォーゼル…?!」


目を丸くして彼の名を呼んだ。

そこには、一派の証である赤いマントを身につけていない最年少幹部の姿があった。

2度目の素顔に、一瞬、誰だか分からなかったほどだ。


「…ノアさん。」


彼は、すっ、と私に歩み寄り、私の人差し指に自分の指輪をはめた。


…ポゥッ!


その途端、淡いオレンジの光が私の瞳に宿る。


パァァッ!!


現れる魔法陣。

そこに、まるで滝のように指輪から溢れた光が飲み込まれていく。


(…私の体に、魔力が吸い込まれていく…!)