「!」
(挑発された…!)
にこにこと余裕を崩さない彼は、私に向かって腕を広げている。
(何そのポーズ…!ふつうに抱きつきたくなるじゃん…っ!)
溢れ出しそうな煩悩を必死で抑え、私は彼の隙を伺う。
(…隙がありすぎて逆に手が出せない…っ!)
月明かりに照らされ、ミルクティー色の髪が綺麗に光を反射している。
だが、見惚れている場合ではない。
私は思い切って地面を蹴った。
タンッ!
彼に向かって襲いかかろうとするが、かわされるのは目に見えていた。
ふわりと捨て身の攻撃を避けた彼は、素早く私の背後を取る。
「っ?!」
両腕を掴まれ、背中から彼に抱きしめられる。
すっぽりと包まれた瞬間、不覚にも私の胸が鳴り始めた。
「ふふ…可愛いなあ。」
「かっ、からかわないで…!」
背中から聞こえる声に、どくん、と体が反応したが、私は平静を装う。
そんな私の心中も、きっと彼にはバレているんだろう。
くすくす笑うランバートは、楽しそうに呟いた。
「これじゃあ、ふつうにいちゃいちゃしてるだけだね。」
「私は必死に戦ってます!」
(もう…!この人は本当に遊んでるだけだ…っ!)
その時、ランバートがするり、と私の足の間に足を入れた。
動きを封じられたその時、わずかに低くなった彼の声が耳元で聞こえた。
「…知ってる?人は、間合いゼロからじゃ攻撃出来ないんだよ。武器を振り上げることも、魔法陣を広げることも出来ない。」
すり…、と手首を撫でる彼の指。
ぞくり!と体に甘い痺れが走った。
(…このままじゃ、いいようにからかわれて終わりだ。何か、何かないのだろうか。この状況で、彼に“傷”をつける方法は…!)
「!」
その時。
私の脳裏にある作戦が浮かんだのだ。



