その言葉に、私は自分で言い出したにも関わらず目を見開いた。
実際に自分が行くことになって焦っているわけではない。
ランバートが提案を呑んだことに驚きを隠せないのだ。
「ほ、ほんと…?」
「うん。…でも…」
言葉を途切れさせたランバートは、すっ、と私から離れた。
そして、不敵な笑みを浮かべて言い放つ。
「ノアちゃんが俺に勝てたらね。」
(え…っ?)
ふっ、と、笑った彼は、ドサ、とベッドの上に背負っていた大剣を置いた。
月明かりの中佇む彼は、何も言えない私を見つめたまま続ける。
「俺より強くないと俺の代わりにはなれないでしょ?だから、“今からノアちゃんが俺に一つでも傷をつけることが出来たら”、ノアちゃんの提案を呑んであげる。」
(!な、何それ…!)
「そんなの、無茶だよ!」
「無茶なことを言い始めたのはノアちゃんでしょ?これくらいしてもらわないと、戦場には行かせられないよ?」
彼は、にやり、と、笑ってそう答えた。
この人は、無理だと分かっていながらこういうことを平気で言う。
数分前に魔法を使えるようになったばかりの一般人が、死線をくぐり抜けてきたエーテルの団長に敵うはずない。
ランバートは、私の反応を面白がるように口を開いた。
「俺はもちろん武器も魔法も使わないよ。おまけに、今は“手負い状態”だし。チャンスじゃない?あ、俺の大剣使ってもいいよ?」
「私が武器を持ったことないの知ってるくせに…!」
「あははっ!…んー、しょうがないな。かすり傷や引っかき傷でもいいよ。ノアちゃんも、爪で引っかいたことくらいあるでしょ。」
(私は猫かっ…!)
くすくすと笑う彼は、完全に楽しんでいる。
この人は本当に想像を上回ることを急に言ってくるからだめだ。
本心は相変わらず読めないし。
私が勝つ未来など想像していないんだろう。
ランバートは、にやり、と笑って私に告げた。
「おいで、ノアちゃん。…どこからでも。」



