「ノアちゃん。」
頭上から優しげな声が聞こえた。
出会った時から幾度となく呼ばれてきた私の名前。
初めて人から呼ばれるようになった私の名前。
彼が呼ぶと、特別な言葉のように聞こえる。
「俺は、ノアちゃんとここでお別れしないといけない。」
ゆっくりと、ランバートが語り出す。
「ここまで付いてきてくれたイヴァン達に応えなくちゃいけないし、このままカイを見捨てることもできない。…王からの任務を遂行するのが、エーテルの勤めだから。」
交わる2人の視線。
ランバートは、翡翠の瞳にまっすぐ私を映した。
「俺、いちお、これでも団長だからさ。立ち止まれないんだ。」
ランバートは、本心を悟らせない爽やかな笑みを浮かべている。
「まぁ、“お別れ”って言っても一瞬だよ!すぐに一派の幻夢石を砕いて帰ってくるからさ。」
その時。
無意識に口から言葉が溢れる。
「…だめ。…行かないで。」
「!」
「そんな体で、行かせられない。」
私を見つめるランバートに、私はついに言い放った。
「私が、ランバートの魔法をコピーして代わりに行く…!」



