ランバートの瞳がわずかに揺らめく。
その瞬間。
カイさんが強く地面を蹴ってランバートとの距離を詰めた。
(っ!速い……!)
間合い数十センチの距離で、我に返ったランバートがカイさんの鎌を大剣で受け止める。
激しく音を立てる刃。
大きな魔力がぶつかり合う中、カイさんがランバートを目だけで見上げて口を開いた。
「…今、どうして迷ったんです?エーテルの団長ともあろうあなたが。僕に“情”でもわきましたか。」
「!」
ぞくり、と体が震える。
2人の会話を聞き取ることはできない。
ただ、ランバートの顔色が変わるのを見た瞬間、得体の知れない不吉な予感がこみ上げる。
「僕の知っているランバートさんは、“甘さ”なんかで任務を失敗したことはなかった。敵にはいつも容赦がなくて、王のためなら人殺しだって躊躇なかったはずです。」
「…そうだな。否定はしないよ。」
「じゃあ、どうして手を止めたんです?…まさか、“大切な人の前で殺しは出来ない”なんて言うつもりじゃないですよね。」
「!」
エーテルの団員たちも2人の交わす会話が聞き取れていないようで、焦りと不安に満ちた顔をしていた。
ランバートは、ギリギリとカイさんの鎌を受け止めながら何かを話している。
「そんなことを恐れているんじゃない。これは、俺とカイの問題だ…!」
「…それはどうですかね。ランバートさんは、さっきから彼女に危害が及ばないかばかり考えてるでしょう。」
「っ!」
「いつもあなたを見てきた僕には、分かるんですよ。今のあなたは、王の任務よりも彼女の方が気がかりなんだ。」
(…何を、話しているの…?)
状況を見守るフォーゼルが、くっ、と眉を寄せたその時。
カイさんがわずかに唇を動かすのが視界に映った。
「…あなたは、僕が憧れていたランバートさんじゃない。」



