大剣のエーテル


「っ!!」


どきり、として思わず足が止まる。


(っ、な、何?今度こそ、死体…?!)


町民はまず立ち寄らない森の奥に、人が倒れているなんてありえない。

足だけが見えたため恐怖が倍増したが、注意深く見てみると幹の裏手にちゃんと体が横たわっている。

ページが開かれた一冊の本を抱えながら寝ているようだ。


(…男の…人…?)


死体ではないようで、彼はすやすやと気持ちよさそうに寝息を立てている。

ミルクティー色のサラサラの髪。

まぶたを閉じていても、その顔が整っていることが分かる。


(…綺麗な人だな…天使みたいな寝顔…)


同い年くらいの彼の寝顔は無防備で、荷物も、抱えている一冊の本くらいしかないようだ。

つい、彼に見とれていると、足元にふわふわした毛の感触がした。


「…みゃぁ…」


「っ?」


驚いて足元を見ると、一匹の子猫が私に擦り寄っている。

首輪もつけていない暗めの毛色の猫は、小さく鳴くと気まぐれに歩き出し、素早く森の中へと消えていった。

さわさわと少し冷たい風が辺りを流れる。


(…行っちゃった。ノラ猫かな…?)


「…ん…」


その時、青年から小さな声が聞こえた。

軽く寝返りを打つと、胸元に乗っていた本がばさり、と落ちる。


(…あ、)


つい、しゃがみ込んで彼の本を手に取った。

そこには、見たこともない文字が並んでいる。


(…この国の文字じゃない。外国の本…?)


その時、本の挿絵が目に留まった。


(あれ、この本……)


と、挿絵に見入った、次の瞬間だった。