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ガサガサガサ…!
草木を分け入って森を直進する。
やがて、ある程度整備された道に出ると、私は「はぁ…っ」と息を吐いて立ち止まった。
膝に手を当てて呼吸を整えると、浮かんでくるのは漆黒のスーツをまとったイヴァンさんの姿。
(今日は、平和な誕生日どころじゃない。きっと、この先、一度もないような大切な記念日だ。)
私は、そのまま軽い足取りで森を進む。
木漏れ日が差し込み、道を明るく照らしていた。
(いつもなら、この辺で野草やキノコを探したりするけど…今日はもっと奥まで行って、川魚でも獲ろうかな。)
普段は、腹が膨れればそれで十分だし、栄養のバランスを考えたことなどないが、今日は違う。
なんせ、お客は“2人”だ。
出来るだけ“普通の食事”を提供しなくてはならない。
たっ、たっ、たっ
小走りで森の奥へと向かう。
(この先の草原を越えたあたりに、確か川が流れていたはず。)
その時、ざぁっ!と風が吹くと同時に目の前が開けた。
緑の草原が一面に広がり、花々が気持ちよさそうに風に吹かれている。
私が足を踏み出し、草原を横切ろうとした時だった。
「ん…?」
ふと、私のすぐ横に生える大木の下に、茶色い靴を履いた“人の足”が見えた。



