(よかった。ロルフの罪が無くなって…。)
ほっ、と胸をなでおろし、エーテル達と共に本部を去ろうとした
次の瞬間だった。
ピリリリ!ピリリリ!
私たちを追いかけて来たレガリア達の通信機が音を立てた。
どうやら、本部からの連絡のようだ。
険しい顔をした隊員達が、通信機に耳を集中させている。
『緊急連絡、緊急連絡!爆弾魔が東の塔から逃走した模様!至急、外の門へ向かえ!』
(!爆弾魔が本部を出た…?!)
緊張感が辺りに立ち込めた瞬間だった。
「…!」
ランバートが何かを察したように、ぴくり、と肩を震わせた。
彼の強張った顔に心臓が鈍く音を立てる。
「ランバート…?」
一気に雰囲気を変えた彼の名を呼んだその時。
ランバートは耳を澄まさなければ聞き取れないほどのトーンで呟いた。
「…“カイ”……」
(え…?)
翡翠色の瞳が鈍く光った瞬間、ランバートは外套を翻して駆け出した。
状況を掴むもなく、ランバートは素早くイヴァンさんに指示を飛ばす。
「イヴァン達は本部を出て、街の宿屋に向かえ!誰一人として本部に近づくな!」
「!あぁ!」
見たこともない真剣な表情。
その命令は、普段の彼なら決して口にしないような強い口調だ。
(…“カイ”って…誰かの名前…?)
何かを察したようなエーテル達は、遠ざかっていくランバートの背中を無言で見つめていた。
イヴァンさんが、動揺を隠すように琥珀色の瞳をわずかに揺らして口を開く。
「行くぞ、お前ら。団長命令だ。早急にこの場を立ち去る。」
ルタとロルフは、険しい顔をして頷いた。
(…なぜか、嫌な胸騒ぎがする…)
私は、ランバートが言い残した言葉の真意を図りかね、もやもやした気持ちを抱えながらエーテル達の後に続いたのだった。



