きっ、と言い返した彼女に、ルタは小さくため息をついた。
そして、彼女の潤む瞳を見つめながら告げる。
「…じゃあ、もし、フェリが大人になって、まだ俺のことを忘れずにいてくれたら…考えてあげるよ。」
「!!」
その言葉に、ランバート達も目を見開いた。
フェリシアちゃんが、ぱぁっ!と表情を明るくする。
「ほんとっ?!」
「うん。」
「せんせーが忘れちゃってるかもしれなくても?」
すると、ルタは愛しげに微笑んで囁いた。
「…俺がフェリを忘れることは、絶対ないよ。」
「!じゃあ、わたしも絶対忘れないっ!やくそく!」
「…はいはい。」
笑顔になったフェリシアちゃんに、ルタは、すくっ、と立ち上がった。
小さな天使に見送られながら、私たちは歩き出す。
「…いいのか、あんなこと言って…。」
「うん。あれは、治療の一環だから。…あれぐらいの年の子の恋なんて、熱みたいなもんだし。…きっと、次会う時には彼氏でも見せにくるでしょ。」
イヴァンの問いかけにそんなことを言ったルタ。
だけど、私は知ってる。
ルタの茶色の鞄の中に、ちゃんとオルガンの楽譜が入っていることを。
“せんせっ!オルガン弾いて…っ!”
懐かれていた天使と別れ、銀髪の外科医が白衣を翻して町を出て行く。
彼の碧い瞳には、次の町へと続く列車の線路が映っていた。
第2章*終



