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「忘れ物はない?もう当分ここには戻らないから、よく確かめなよ。」
次の日の朝。
白衣を着こなしたルタが、茶色の鞄を提げて診療所の前に立つ。
「あの…俺の本が少ない気がするんだけど…」
「あんな量の古本持っていけるか、ボケ。この診療所に置いていく。」
ランバートにぴしゃり、とそう言ったのは、荷物が鞄一つになって晴れ晴れした様子のイヴァンさんである。
彼らの様子に苦笑していると、ルタが私に歩み寄って声をかけた。
「ん、これ。ノアの分の列車の切符。はしゃいで無くしたりしないでよ。」
私は「ありがとう…!」と彼から切符を受け取る。
次の町へは直通の急行列車があるらしい。
(…列車に乗るなんて、はじめて…!)
わくわくした気持ちで浮き足立っていると、晴れやかな出発にそぐわない悲しげな声が耳に届いた。
「せんせ…、どこ行くの…?」
はっ!として振り向くと、そこには泣き出しそうな顔をしたフェリシアちゃんの姿があった。
ルタが、小さく目を見開く。
フェリシアちゃんは、大きな瞳を涙で潤ませた。
何も言葉が出ないようだ。
「フェリ。」
…コツ。
彼女に歩み寄ったルタは、すっ、としゃがみ込んで優しく声をかける。
「…泣かないでよ。」
「……会えなくなっちゃうの、やだ…。
せんせ…だいすき…いかないで…!」
ルタは、ぽん、とフェリシアちゃんの頭を撫でた。
「…俺を好きになるなんて、趣味悪いね。フェリに、俺みたいな戦いでいつ死ぬかわからないような奴は釣り合わないよ。」
「そんなことないもん…!」



