ランバートがそう言いかけた瞬間。
私は、彼に向かってぽつり、と言った。
「…私の前では、笑わなくていいよ。」
「え…?」
ランバートが、小さく声を漏らす。
「ランバートは、今悲しいでしょう…?」
「…!」
「そういう時は、無理しなくていいんだよ…?」
ランバートが、はっ、とした。
彼は、すぐに微笑む。
悲しいときも、苦しいときも、周りばかり気遣って、自分を殺すことに慣れている。
今までも、そうやって生きてきたんだろう。
…彼は私と、少し似ている。
「私、魔力を持ってなくてよかった。」
「え…?」
ぴくり、と肩を震わせるランバートに、私はふわりと笑いかけて続ける。
「だって、もともと魔力を持っていないのなら、もし魔法陣を砕くしか私を助ける方法がなくても、ランバートは迷わずその方法を取れるでしょう?」
「!」
ランバートは、小さく呼吸をした。
2人きりの部屋に、私の声が響く。
「私なら、ランバートの隣に居られる…ってことよね?それなら、私、魔力が無くてよかった。」
いつも、いつも、自身に魔力が宿っていないことをコンプレックスに感じていた。
負い目のせいで、町ですら胸を張って歩けなかった。
“悪魔の子”の呼び名を受け入れていた。
(…でも、今は違う。)
「魔力を持たないことが、貴方が私の手を取ってくれた理由になるなら、私はそれで十分なの。」



