ランバートは、どこか寂しそうな顔をして小さく続ける。
「…エーテルに入る前は他人の魔力を奪うことを許されていなかったから、俺は魔法を使うだけで犯罪者だったんだ。…他人の魔法陣を砕く魔法しか持たない俺は、“生まれながらの大罪人”として周りから畏怖されてたんだよ。」
部屋が、しぃん、と静まり返る。
“俺の持って生まれた魔法は役立たずでさ。喧嘩もまともに出来なくて。俺はただの人間同然の暮らしをしてきたから、周りとは少し違ってたんだよね。”
かつてのランバートの言葉が蘇る。
彼は、わずかに目を細めた。
「…俺はエーテルになった後、過去に一度だけ、敵以外の人の魔法陣を砕いたことがあるんだ。」
「…!」
「それは、その人を守るためでもあったんだけど…それからは、魔法を使うことが怖くなってさ。大剣でしか戦えなくなった。」
(守るために…魔法陣を砕いた…?)
謎が残るセリフだったが、ランバートに聞けるような雰囲気ではなかった。
この話は、ランバートにとってトラウマのような事件らしい。
彼の時折見せる、寂しそうで、達観したような雰囲気はこの事件が原因なのだろうか。
「…俺は、人を周りに置くことが怖くなったんだ。俺がその人を守る力がない限り、また同じ過ちを繰り返すかもしれない…」
ぽつり、とそう呟いた彼は、はっ、としたように翡翠の目を見開いた。
そして、あはは、といつもの柔らかい表情で苦笑する。
「ごめんね、ノアちゃん。暗くなっちゃったね。気にしないで…」



