緊張気味に、ぱさり、とシャツを肩から落とすと、後ろから真剣なトーンの声が聞こえた。


「打撲だけで、裂傷はないみたいだね。…じゃ、力抜いて。」


そっと声をかけられ、肌に彼の指の感触がした。

痣を押されたような鈍い痛みが背中にはしる。


「ノア。息吸うと胸は痛む?」


「…い、いえ…。」


ルタさんは「肋骨と肺には異常がないみたいだね。」と呟いた。

その時、ひんやりとした感触が背中に触れる。


「ひゃっ?!」


「ただの湿布。動かないで。」


手際良く処置をするルタさんの存在を背中に感じながら、私はただ、じっと身をまかせる。

その時、ルタさんが呟くように口を開いた。


「ほんと…一歩間違えば死んでたよ、あんた。こんな打撲だけで済んだとはいえ、無鉄砲にも程がある。」


「す…すみません…。」


しゅん、として謝ると、彼は小さくため息をついた。


「別に、謝る必要はないでしょ。」


「え?」


「あんたのおかげで、フェリが笑顔になれたから。…そこは、褒めてもいい。」