「ベランダニデテ パダ」

ベルが鳴った。私はポケベルを持つようになっていた。

団地のベランダから外を見た。パダがいた。
外に出た。

その時、ロクはバイト中で、私は初めて、パダと2人で会った。

「よう。」

パダは、ニヤっと笑う。虫歯が見える。
団地の中の小さな公園のベンチで、私たちは隣同士座った。
パダは、マルボロに火をつけた。
ふぅ、とため息をついた。
パダ、いつもと感じが違う。すぐに気付いた。

「俺、チアキと、別れた。」

「まだお互い好きなんだけどー。チアキの親が反対すんだもん。しゃーないよな。」

「俺じゃ、ダメなんだよな。好きなだけじゃ、ダメなんだよな。今、別れてきたよ。」

気がつくと、泣いていた。
私が

「オイオイ〜〜なんで?泣きたいの、俺だよ〜〜」

自分でも、なぜか、わからなかった。
私の好きなパダが、チアキの親に否定されたのが、悲しかったのかもしれない。

どうして、悲しい時に、真っ先に私のところに来てくれたの。

そんなことされたら、私どんどん、頭の中が、パダでいっぱいになる。

「しいは、幸せになれよな。ロクと。」

何も、言い返せなかった。
ロクじゃなくて、あなたが好きだと言えたら、どれだけ良かっただろう。