「いらっしゃい!!!」
威勢のいい掛け声の居酒屋。

若くて元気のいい、髪を青色に染めた子が出てきた。
「えっ!ロクが女の子連れてくるの、初めてなんだけど!誰!?」

バイト先が同じだと、ロクは答えた。

「そっかそっか!俺、ロクのツレのパダ!よろしく!」

【そいつ】と会った。

パダはよく喋った。
その間ロクは黙っていた。

「俺、中卒でここで働いてんだ。元気なのだけが売りだからさ」
「俺、服が好き。給料はほぼ、服に消えてるかも!」

ファッションのことは、何も知らない。
いつも服は、イトーヨーカドーだから。

「しいちゃん、だっけ?服もうちょっと変えて、髪色も明るくして。眉毛も整えたら…うん。可愛くなるよ。」
パダはにこっと笑った。虫歯が見えた。

髪は染めたことがない。
メイクもしたことがない。

高校に入って、髪を染めている子も、メイクをしている子もいる。
でも自分には関係ないと思っていた。


若い客が入ってきた。

「いらっしゃい!!!あ、マキちゃん。」
「ヒヤクいる?」
「奥にいるよ!」

うちの学校にはいないタイプだった。
黒で統一した、当時モード系と呼ばれた服装をして、髪色は黒だけど、斬新な髪型をしていた。

「うちの常連のマキちゃん。可愛いけど、ヒヤクさんの彼女。」

私は、とっさに、口に出していた
パダにも、彼女がいるのかと

「俺?いるよ。チアキっていうんだ。チアキと、最近会ってないけど。」