「ねえ、華恋。私たちが初めて話したのっ

て、図書室だっけ。」

昼休み。華恋はいつものように静かに読

書をしている。そんな彼女の前席、和代の席

にドカドカと腰掛け、片手にペットボトルを

抱えている唯がいた。

「ねえー華恋。ま、私は慣れてることで

はあるんだけどさ、その華麗な無視をどう

にかしてくんない?流石に毎日それはきつ

いぞよぉー。」

唯はまたいつものような高いテンション

で話しかけてくる。唯は本の間に、手を挟

めたり、おーいおーいなんて言ったりして

みたが、全く反応なし。

「そうか、これは真実とみた!」

そう張り切って唯は立ち上がる。華恋はと

ても集中力が高い。それ故に、一度彼女の世

界が構築されていくと、彼女は周りが全く見

えなくなってしまう。だから、何を話しかけ

ても、どんなに邪魔をしても、自分の世界を

阻むものは無意識に避けているのだ。


ただ、例外も少なからずある。それは唯の

みの話だが、彼女をからかって、無視するこ

とを楽しんでいる場合だ。


華恋は唯の反応が好きだった。つまらない

ような話で大口を開けて笑ったり、クスクス

と静かな笑みを浮かべてみたり。そんな彼女

の困り笑いの表情も見てみたくて、彼女は無

視という遊びを彼女に頻繁に行っているので

ある。


だが、あいにく、今日は本当に自分の世界

モード、つまり、"真実”であるらしかった。


そんな時、唯はスっと華恋の元から離れて

いく。


彼らは友達であるが、変に相手の中に踏み

入ったりはしない。

華恋としては、自分の世界に浸りたいのだ

し、唯としては何の話も始まらない相手の所

にいたってつまらないだけだ。

唯はすぐに、他に固まっている女子たちの

所へ行って、動かしたかった口をベラベラと

動かし始めた。