「それにさ、俺友達なんて全然いないからはるや翼と友達になれて凄く嬉しいんだよな」
「全然いないって…雨谷先輩は友達多そうですけど」
雨谷先輩は全然と言っていい程、友達が少ないらしい。
こんなに人気のあるアイドルなのであれば自然に人が集まって、友達なんてたくさんいると思っていた。
だけど、そうではない。
たくさん集まってくるどころかその真逆。
逆に近寄って来ないのだ。
理由としては私と同じように「目立ちたくない」という考えを持ったり、自分とは立場も世界も全く違う人だと避けられるから。
「その点はなんかはると似てるよな。だからはるの気持ちもわかるのかも」
もし近寄って来てくれた人がいたとしても、それは大半が下心のある人。
『雨谷耀』としてではなく、『Octet Rainの雨谷耀』として友達になろうとする人だ。
下心がなかったとしても、『Octet Rainの雨谷耀』の存在は大きく、誰もがどこか遠慮して距離を取る。
「初めて会った時のはると翼の反応はアイドルとしては残念だったけど…俺自身としては嬉しかったんだ。あの興味の全くなさそうな顔な」
雨谷先輩は笑いながらそう話す。
先輩は興味のなさそうなどころか、それを超えて嫌そうな顔をしていたぐらいだ。
私はまぁ…どう思ったとしても元からそんな顔しかしていないんだろうけど。
「だからさ、俺と…雨谷耀と友達になってくれてありがとな」
少しはにかんで笑う。

