目立ちたくない、という理由から先輩に関わりたくないのであって…
先輩のことが嫌いなわけではない。
好きなわけでも…ないけど。
「そうですね。私もそう思います。…でも、私や雨谷先輩以外の人達はほとんどが怖いと思っています」
「あー…先生とかにも聞いた限りそうみたいだな」
「だから雨谷先輩は先輩と仲良くしていて、それを周りに見られて嫌だと思いませんか?」
「どうしてそう思うんだ?」
いつもの穏やかな雰囲気とは違い、少し不機嫌な表情で問い掛けてくる。
「雨谷先輩はアイドルですし…アイドルじゃないとしても悪い印象を持たれるのは嫌かなと」
「俺は悪い印象を持たれたとしても、はるとは友達でいるよ。どんな噂があろうが、俺の知ってるはるのいいところは変わらない」
雨谷先輩は顎に手を添え、少し黙った後、人差し指を立てた。
「もし翼の友達に根も葉もない悪い噂が立ったとして、翼はその子との関係はどうする?友達でいることをやめるか?」
その質問で、雨谷先輩の言ったことがよくわかった。
「どんな噂があろうが、俺の知ってるはるのいいところは変わらない」ということ。
もし、りりなや香澄に悪い噂が立ったとしても、私の知っているりりなや香澄のいいところは変わらない。
だから今の友達の関係を切ることはない。
「いえ、友達でいます」
「それと同じ。ただ、はるは俺と友達になる前に噂が先に立っていた。ただそれだけ」
もし、私も先輩の噂が立つ前に先輩と出会っていたら………。

