「お願いっ…!」


6月に入り、私は再び佐藤先生に呼び出され職員室へと来ていた。

両手を頬の横で合わせ、大きな瞳をうるうるとさせながら上目遣いで見てくる。

男子生徒には効果があるだろうが、残念。私は女子生徒である。


「すみません。私には無理です」

「えっ…そ、そこをなんとかお願い!」

「無理です」


つい一ヶ月前にも全く同じやりとりをした覚えがある。

前回はここで諦めてくれたのだが…


「最後…最後のお願いだからっ!伊坂さん!」

「えっ…」


今回は諦めてくれないらしい。

私に抱きつき、再び迫ってくる。