香澄は一歩前に出て、心配そうにりりなが怪我をした足元へと目を向ける。


「私もついて行きますわ」

「かすみんは危なっかしい2人の面倒を見ててくれないと困るなぁ」

「じゃあ、私がついて行きます」

「翼ちゃんは耀ちんの面倒を見ててくれないと」

「俺どんだけ面倒見られなきゃいけないんだよ」


耀先輩の言葉に先輩は笑う。

困惑気味のりりなのことは気にせず「治療したらすぐ戻ってくるから3人で遊んでて~」とホテルの方向へと歩いて行った。


「りりな大丈夫かな」

「んー…まぁ、そんなに傷は深くなさそうだったし」

「いえ。そっちじゃないです」

「え?」


勿論、傷も心配だけど…もう1つ心配なことがある。

先輩がりりなに何かをするとは思ってもいないし、その点は心配ない。

ただ、りりなが一緒に居づらくて困るということが心配。


「翼、大丈夫ですわよ。りりなは本心で嫌がっているわけではありませんから」


私が考えていることがわかったようで、そう言って香澄は微笑んだ。


「だといいんだけど…。私のせいで2人を困らせちゃってる気がして」

「全くそんなことありませんわよ。少なくとも私は気が合いそうですもの」

「え。そこまで?」

「ええ。翼のおかげで交友の輪が広がりましたわ」

「そっか…」


香澄が「気が合う」と言うのであれば本当に気が合うのだろう。

まさかそう思うまでも仲良くなるとは思わなかった。

しかもあの短時間で。


「さて。2人が戻ってくるまで違うことをしていましょうか」