ただの男であったなら、すぐに彼女を自分のものにしていただろう。

だが、俺は王太子でいろんな責任を背負っているし、命の危険にも晒されている。

ディオンに譲れたらいいが、あいつに任せられるほど、インヴァネスは安定していない。

広大なインヴァネスを治めるには、強大な力が必要だ。

だから、俺は禁忌を犯して悪魔と契約した。

自分の身を危険に晒すのは、俺だけでいい。

だが、やすやすとルシファーに身を捧げる気はない。

奴を破滅させる方法がひとつだけある。

俺はそれに賭けているのだ。

多分……アンがその希望の光だと思っている。

俺はたまに予知夢を見る。

父が死ぬ前日に、ふたつの夢を見た。

ひとつは、俺がルシファーと契約する夢。

そして、もうひとつは……俺がアンを剣で貫く夢。

ルシファーとの契約の夢は現実になった。