腹黒王太子の華麗なる策略

思わず声を上げ、手に持っていた衣を落とし、両手で顔を覆う。

「アン?」

クリスがこちらを振り返る気配がして、慌ててこの場から逃げ出そうとするが、クリスの衣に躓ずき身体がよろけた。

「きゃあ!」

体勢を立て直せず、そのまま顔面から岩風呂にバシャッと落ちる。

深くはないから溺れはしなかったけど、お湯が鼻と口に入って苦しい。

手をついてお湯から顔を上げながら、「コホッ、コホッ」っとむせた。

「アン、大丈夫?」

すぐ側でクリスの声がすると思ったら、彼は私の目の前にいて私をそっと抱き締めた。

「馬鹿だなあ。慌てるからだよ」

兄のような口調で言うと、クリスは私の背中を優しくさする。

密着する身体。

ビクッとして固まる私。