「昨日はあんなに吹雪だったのに、どうして雪が跡形もなく消えてるのかな?」

不思議そうに首を傾げるアンに、俺は素知らぬ振りをして言った。

「ラミレス王の仕業じゃないか?」

「そうだよね。私達が聖剣を見つけやすくしてくれたんだわ」

アンは目を輝かせながら、同意する。

本当は、俺が魔力でオリン山の雪を止めていた。

これは一か八かの賭け。

あの吹雪ではこの山を歩けない。

魔力を出し惜しみしている場合じゃない。

雪を止めれば俺達は楽に動けるが、それはシャメル達にも同じことが言えるのは十分承知している。

多分、この山にフィオナの気配を感じなかったのは、ラミレス王の力が働いていて魔力を使えなかったからだろう。

俺が魔力をここで使えるのは恐らくルシファーが元は天界の者だったから。