「クリス、あれ何?青くてお水がいっぱい溜まってるの?」

アンが海を指差しながら興奮した様子で俺を振り返る。

そんな彼女を見て頰を緩め、俺は楽しげに言った。

「あれは海だ」

俺とアンは今、モコの背に乗って空の散歩を楽しんでいる。

空は雲ひとつない快晴。空気は澄んでいて気持ちがいい。

俺が悪魔との契約について彼女に話をした時、予想通り彼女は泣き崩れた。

アンが受け止められるだけの精神状態になったら話すつもりでいたが、 ディオンがうっかり口滑らせ急遽彼女に説明する羽目に……。

だが、これでよかったのかもしれない。

今日話さなかったら、打ち明けるのをずっと先延ばしにしていただろう。

昼過ぎまで泣いていたアンをなだめると、モコを呼んで外に連れ出した。