腹黒王太子の華麗なる策略

「何?今の音?」

そんな声をもらすと、向かいの部屋のドアが勢いよく開いて、背の高い茶髪の男性が出て来た。

エメラルドのような緑の瞳に、小麦色に焼けた肌。

精悍な顔をしているディオンは武術に優れ、異国の兵をひとりで千人倒したという強者。

まだ十七歳なのに騎馬隊を率いてクリスの代わりに戦地に赴き、雷のような一撃で敵を倒す彼を、人は『インヴァネスの雷神』と呼ぶ。

「おい、今……ラルフ宰相の声が聞こえたんだが、何かあったのか?」

私に気づいたディオンは、乱れた髪をかきあげながらそう問い掛ける。

すごく眠そう。今起きたって顔だなあ。

さっきの音、ベッドから落ちたんじゃないだろうか?

ディオンって朝弱いんだよね。

腹違いの兄弟だけど、クリスとディオンは仲がいい。