「ほら、さっさと来い!」


耳を塞ぎたくなるような声で怒鳴られて、仕方なく、といった様子で気怠げに歩き始めた彼は、扉の近くに立っていた私と朝陽の横を通り過ぎた。

けれど、その一瞬、不意に足を止めると綺麗な切れ長の目を、私へ目を向けて──。


「……アンタと隣の男。ガキと保護者みたいで、気持ち悪い」

「……っ!」


そんな、鋭く尖った針のような言葉を耳元で囁くと、冷たい視線だけを残して音楽室を出ていった。