数時間前…ではなく、もっと前。
数日前からいつきくんは一くんに対して疑いの目を向けていた。
何かを企んでいる、と。
その疑いが強まったのはあの時の会話だ。
私がいつきくんに凪さんが会ってくれると伝えに行った時。
「若もいいですよね?」
「えっ!?ええっ…!?俺様もか!?」
あれほど「会いたい!」と言っていた本人がなぜ驚くのかと。
まるで自分は初めから会うつもりはないような返答。
「凪さんは先にいつきくんとだけに会って話がしたいって」
私がフォローのためにそう言った後、一くんは何も反応しなかった。
普段の一くんであれば「なんでいつきだけなんだよ!?」や「どうにかして俺様も!」などと言うであろう。
私ですらそう想定できるのだから、小さい頃からずっと一緒にいるいつきくんが想定できないわけがない。
一くんの言動は大抵想定ができ、その想定通りになる。
だから何も反応をしない一くんが不自然でしかなかった。
そして確信したのは8時間程前。
いつきくんと凪さんが待ち合わせをした場所で会った時だ。
「…それにしてもすみません。俺の買い物に付き合わせるような形となってしまって」
「いえ、構いませんよ。今日でないと時間がなかったのですよね」
「え?それはどういう?」
「静音様から「1月31日に会いたい」といつき様がおっしゃっていたと聞いておりますが?」
「俺はナギ様が「1月31日に」と聞きましたけど…」
この会話のズレで2人は勘付いた。
そしてバレていないと思っていたのだが、実は私と柊也がずっとつけていたのも容易くバレていた。
バレずに尾行できていると思っていたから尚更恥ずかしい。

