でも、やっぱり医師の予測通り、私の心臓には負荷がかかって産後からなかなか思うように夏美のお世話も出来ない身体になってしまった。

そこで出生届を出す所から楓シスターに頼んで、楓シスターの子になるように特別養子縁組をしてもらったの。
貴方の戸籍の母は養護施設の楓シスターになった。

何とか夏美と暮らしたいと、私も諦めず治療に励んだけれどやっぱりダメで。
私は残りの日々は乳児院で夏美やほかの子のお世話をしながら穏やかに過ごしています。


私の心残りは、あなたの成長が見守れない事。

でも、貴方を産んだことには一片の後悔もないわ。
離れてしまったけれどエドワードが私の人生で唯一愛した男性であり、大切な夏美、貴方の父親です。

私の勝手で貴方から父親を無くしてしまった事は謝るわ。

でも、その父親と会う会わない。
許す許さない、その全ては夏美、あなたに委ねます。
だって夏美の人生ですもの。

ただ、願わくば私の愛した大切な二人が、いつか穏やかに会えることを私は願っています。


PS、あなたのお父さんはきっと歳を取ってもカッコイイわよ!
彼はとてもモテた人だから。


そして、この手紙を読む今、夏美にとっての幸せを大切にしてね。


夏美の産みの母、麗蘭より


最後の付け加えに、何だか母の若さを感じる一文はあったけれど、母が最後まで父を想い、私を愛してくれていたことはよく分かった。


なんかお母さんが頑固だったのかなとも思うし、父もやや強引なタイプに見受けられる。


でも、読んでなんだか気分は吹っ切れた。


私は母だけでも十分に愛されてたみたいだし、会ったこともないが父親は近々突撃してきそうだし…。


「人生なるようになる。そういうことかもしれないね。お母さん…」


そう、車窓に流れる景色を見つつ呟く。

段々と都会に近づいてきて、夕方。

私は東京に戻った。


やっぱり私が帰りたい所はあっちゃんと、さっちゃんのいる家だったから…。


駅に降り立ち、スマホの電源を入れるとすぐさま鳴る私のスマホ。


着信件数見たくないな。
後で消しておこう。


「はい、あっちゃん。ごめんね。うん。うん。今から帰るよ。迎えに来なくて大丈夫だから!」

そう話しながら私は、私の居場所に帰るために歩き出した。