『落ち込んだあとに言ってたよな。俺は一生独身で行く。レイラ以上に愛する人には出会えないと。事実そのままエドは独身だ。あの貴族社会で。分家に跡を取らせる手配までして…』

今のエドの事はコージが一番知っている。
マメに連絡を取り合う仲だし、お互いに国際弁護士の資格持ちで色々案件についても話すからだ。


『そうか、エドは本当にあの時の通りレイラさん一筋なんだな』

そう言うと


『あぁ、実は夏美ちゃんには黙っていたが。毎年必ず命日には来日して彼女のお墓参りしているよ』


今まで聞いていなかった事実に驚く。


『エドがそんなに日本に来てるなんて聞いてないぞ?』

『エドも忙しい合間を縫って来てるからな。でも二十年毎年欠かさない。夏美ちゃんは会いたくないと言っていたが・・・。俺は出来たら会って欲しいと願ってるよ。エドの友人としてはね…』


『そうか。夏美次第だろうな。それで、どこに行ったかは、分からないんだな?』

『あぁ、そこまでは聞いてない。すまんな。でも、夏美ちゃん言ってたぞ。私が帰るところはあっちゃんとさっちゃんのいるあの家だってな。じゃあな』


そう言って切れたスマホを眺める。


使いたくはなかったが心配からGPS機能を使おうとした矢先

「アカリ、夏美からメッセージが来たわ」


『今夜は一人になりたい。ちゃんとホテルに泊まってるから安心して。明日帰ります』

そのメッセージを見て一息つくも、本当に帰って来てくれるのか不安だった。

それでも待とうと由香里ちゃんとの話もあり思っていたら


『明日は仕事を休ませて下さい。明日中には必ず帰るから。だからすこし時間を下さい』


そんな連絡が再びサチに入った。

不安に拍車がかかるも、その後GPS機能を使ったが電源が切られていた。


とことん後手に回っている。

普段のキレはどこに行ったという始末。

とことん情けなさに打ちのめされる結果になった。


「夏美・・・、帰って来てくれるか?」


この独り言に

「ドーンと構えてなさいよ、四十過ぎの男が情けない。肝だけなら夏美の方が据わってるわね」

このサチの言葉がグサッと刺さった。


待てる度量くらい無くては…。


「サチ、俺は・・・」

「あんたは元々に戻るだけでしょ?確かにあんたはそろそろ潮時よ!」

その言葉に後押しされるように、俺はその夜からしまい込んでいた服を取り出し着ることにした。