ご飯を食べたあとはまずは由香里ちゃんから連絡した。


『はい、アカリさんですか?何かありました?』

いきなりの電話に驚いていたものの、そう聞いてくれた由香里ちゃんに


『ちょっとゴタゴタがあってね、夏美が家を出てしまって・・・。夏美から由香里ちゃんに連絡来てないかしら?』


そう聞くと


『夏美に何があったんです?あんなにそこが私に出来た居場所なんだって、嬉しそうに話してくれてた夏美に何したんですか!?』

電話口の由香里ちゃんの声も俺を責める感情が入り冷えている。
由香里ちゃんと夏美はホントに仲のいい友だちなのだと、こんな時なのに安堵の気持ちを持つ。


『実は夏美の父親を名乗る人物が日本のテレビ局の会いたい人探しにの番組に応募したらしくてね。その番組のディレクターが私の知人で無理矢理自宅に付いてきて夏美に交渉始めちゃったの。昼間にも事務所に連絡が来ていて、その時は智子さんが上手く避けてくれたらしいのに…。そんな事態になって夏美が、無表情で話し出して…。最後にここを出てしまったの…』


情けないが事実も起きた事態も変わらないので、隠さず話す。


『あなた達気づいてなかったの?夏美にとっての鬼門はその父親だと。探しにも来ない、会いにも来ない。そんな相手でもお母さんが呟いた言葉と見ていた写真を記憶してるから。だからこそ夏美はあの目をカラコンで隠してた。お母さんの記憶と自分の気持ちの複雑さから…。あの目が目立てばいずれ見つかるから。あの瞳が父親にとっての自分を探す目印になるって、一番分かっていたから。だからこそ隠し続けた…。会いたいけど会いたくない人。それが夏美にとっての父親よ…』


その言葉に、俺は瞠目した。
あの日聞いていたのに…
自分と同じだと知っていたはずなのに…
どうして俺は…
恐る恐る、しかし内心では確信を持って由香里ちゃんに聞いた。


『夏美は自分の父親を知っているの?』


『夏美は知っているとは言わないわ。記憶してるとだけ。あの夏美の特技の凄まじい記憶の中に唯一あったと聞いたわ。お母さんも忘れると思ってたんでしょうね。赤ちゃんだった夏美に1度だけ見せた1枚の写真。そこには自分と同じ瞳にブロンドヘアーの男性とお母さんが微笑んで写っていた写真を見たんだと聞いたわ』