「あー、この顔だと夏美はあの特技もバラしてないな?」

ギクギクっと首を巡らせると、由香里がいい笑顔している。


「由香里?そこは黙っとこう?ね?悪いことは言わないからぁ!!」


そう焦って叫びながら言うと、


「夏美、ここに居るみんなは仕事の関わりだし、上司に当たるだろうけど。見てたら分かる。それだけじゃないんでしょう?なら話しておいた方がいいんじゃないの?特技くらい」


うー、と悩んでいると…


「なっちゃん、まだ何か隠してる?私達頼りにならないかしら?」

さっちゃんがしょんぼりしている。
さっちゃんを凹ませるのは本意ではない。



「あのね、施設の先生方にも黙ってたし。誤魔化してきてたんだけれども。謎のと言うか特技があって…。私、見たものを記憶しておけてあまり忘れないの。見たままをまた思い出すことが出来るから。だから勉強も教科書見れば覚えられたし、実はさっちゃんやレンちゃんがしてくれたメイクも動きを見てたから自分で再現できるの。あっちゃんがしてくれたコーディネートも組み合わせ全て覚えてるし・・・」


そう言うと、実にあっけなくさらなる事実が告げられる。


「あら、そうなの?それならアカリも同じよ?アカリも一度見たものは忘れないし見て覚えたことは再現出来るわ。人の顔もよく覚えてるしね。あれ、それじゃあ夏美あまり覚えてないって言ってたお母さんの事は?」


そう聞いてきたさっちゃんに、私はコクっと頷き答えた。


「よく覚えてる。線の細い可愛らしい人。きっと私を産んだ時今の私より若かった。まだ少女と言える女の人。それが私のお母さん。優しい歌声や名前を呼んでくれた声も覚えてるよ。気持ち悪い?まだ一歳にもならない子が記憶していたなんて・・・」

「そんなことない!」

「私も覚えてること多いから。夏美だけ特別なわけじゃない。少ないかもしれないけど似たような人は居るんだから変な事じゃないし、気持ち悪くもないわ!」

そう言って抱きしめてくれたあっちゃんに、私は寄りかかった。