「あ、私もこちらお渡しします。三郷夏美と申します。今月から事務員として働いております。今後何かとお世話になる事もあるかと思いますので、宜しくお願い致します」

私も自分の名刺を渡してもう1度頭を下げた。


「三郷、これ出身地と思っていいのかな?埼玉出身?」


「良くは分からないんですが、多分そうではないかと…。母の親も既に亡くなった後で、私が産まれた時にはもう母と私の二人だったそうで、父は居なかったと聞いてます」


「そうなの。じゃあ、キミは…」

「母の産後の肥立ちが良くなかったらしく、私が一歳になる前に亡くなってしまったらしくて…。身寄りもなかったので乳児院からその後児童福祉施設で育ちました。大学には母が残してくれていた生命保険のお金を使って行きました」


「そうか、今はどうかな?」


「ここで働かせてもらって、住むところまで借りていて、お世話になりっぱなしなんですけど…。一緒に働いてる人達も嫌な人なんて一人もいなくて、アカリさんとサチコさんにはすごく優しくしてもらって…。こんなに幸せでいいのかなって、ちょっとたまに不安になったりするんですけど…。でもここに居られるのは本当に嬉しいんです」


そうニコッと話すと、ポンポンとまた頭を撫でられた。


「何かあれば俺も力になろう。夏美ちゃん、キミはここに居ていいんだから不安になることは無い。ほら、見てごらん?君の不安を見抜けずにそこで凹んでる奴は、君が嬉ければそれだけで良いみたいだから」


クスっと笑っていう倉持さんに言われて振り返ると、確かにガックリしているあっちゃんが居た。


「アカリさん?何でそんなに?!」


慌てて近くに行くと、ギューッと抱きしめられて言葉をかけられる。


「もう、絶対に不安にさせないわ!100パーセントで幸せって言わせてあげるから!」


そう言われた私は、また胸がポカポカとして温かくて幸せな気分になった。